52ヘルツのクジラたち 内容と感想

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この本のタイトルの、52ヘルツのクジラとは何のことか?
本を読み進めて行くとその事が書いてあった。
普通のクジラは10から30ヘルツの声で仲間と呼び合う。
世界で一番孤独だと言われている、
52ヘルツの声を響かせるクジラがいる。
その声は仲間には届かない。
広い海の中でその歌声はたしかに響いているのに、
周波数が違うので仲間がすぐ近くにいても気づかれる事はない。

このクジラの話を、人と人の関係にも当てはめて、
この本の中では度々語られる。

主人公の若い女性が、
ある田舎の家に一人で引っ越してきた場面からこの物語は始まる。
いかにも訳ありに見えるこの女性の出現は、
隣近所で噂の種になった。

好き勝手な憶測をする人も少なくない。
そんな中での、この女性と
虐待を受けているらしい男の子との出会い。
この男の子は虐待によって完全に心を閉ざしてしまっていた。

波瀾万丈な今までの人生の中で沢山傷ついてきた主人公が、
この男の子を守りたいと考え奔走する。

主人公の女性は、不安定さも弱さもあるし
状況に流されてしまった過去もある。
考えが甘いところも沢山あるし、
やっている事もめちゃくちゃに見えるけれど・・・
それでも何故か憎めないというか、
かなり共感できるところがあった。
これは私の感想なので人それぞれかと思うけど。

計画性も無いし、
その場のことしか考えていない感じはあるけど
それでもその時その時をとにかく一生懸命生きている。

その一生懸命さとか、生きるパワーが伝わってくる。

この女性と男の子の間に芽生えた信頼関係を見ていても、
すごく応援したくなる。
この二人を取り巻く周りの人達の中にも、
暖かさを感じさせる人物は何人も出てくる。

人生で何が起きたとしても、諦めるのはまだ早い。

そんな事を思わせてくれる本なので、
今心が弱っている人にも響くかも。


※ここから内容のネタバレを含みます

主人公の女性は、実の母親との間もうまくいっていなくて
義父、その連れ子である義弟ともうまくいっていなかった。
うまくいっていないというより虐めに近い。
暴力とかではないものの精神的にかなり追い詰められている。

そんな彼女に手を差し伸べてくれた男性の存在。
この彼との間は、恋愛というのとは違う、
それをも超えたような存在だと彼女の方は思っていた。

その後に出会った別の男性は、
最初素敵な人に見えたけれど実はとんでもない男だった。
後に彼女は本当に大切な人の存在に気がついて、
その彼が今までいつも見守ってくれながら
それ以上踏み込んでこなかった本当の理由がわかった。
けれどその時はもう遅くて、
その人の死によって二人の関係は終わってしまう。

辛い事や悲しい事が次々と起きてくる場面も多いので、
読んでいてもしんどい部分もあるけど
それでも生きることを諦めず前を向いていく主人公。
そして彼女と出会った男の子の心も大きく変化していく。

52ヘルツのクジラたち

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