オリジナル小説

自営業者の日常雑記

見えない檻 後編

塀に沿って、私と明日香ちゃんはひたすら進んだ。 最初は必死で走ったけれど、ずっと走っていては体力がもたない。 まだ追手が来る様子も無いので、途中からは歩いた。 時刻は深夜なので、全ての住居が明かりを消していて、辺りはシーンと静まりかえってい...
自営業者の日常雑記

見えない檻 中編

高層ビルみたいなもっと高い建物を想像していたけれど、全然違っていた。 広々として緑豊かな美しい庭の中を歩いていくと、二階建ての木造の建物が見えた。鉄筋コンクリートとは違う感じ。 鉄筋コンクリートが一番耐震性もあるし素晴らしいと教わってきたけ...
自営業者の日常雑記

見えない檻 前編

呼び出し音が鳴っている。 私は椅子から立ち上がって、玄関まで行った。狭い集合住宅の部屋の中で、わずか数秒で行ける距離。 ドローンが配達してくれた食料の箱を持って部屋に戻る。常温の方と、青いシールの方が冷蔵庫に入れる方。 それが済むと、再びパ...
自営業者の日常雑記

妖獣ねこまた 後半

8月6日 あの事件から2日経ったけど、やっぱり何も報道されない。 調べが入るため立ち入り禁止になって、どうせあの場所には入れないし、タネ婆さんも茜さんも避難所である俺の家に戻っている。 あの時は、相手も二人を甘く見て油断してたけど今回の事で...
自営業者の日常雑記

妖獣 ねこまた 前編

天気の良い日でも夕方になると急に冷え込んでくる。吹く風の冷たさに、季節が秋から冬に変わりつつあるのを肌て感じる。けれど、雪が降って本格的な寒さがやってくるのは、まだ少し先だ。そんな秋の日の夕方、学校からの帰り道で、和人はそれを見つけた。 舗...
小説 色のない街と夢の記憶

小説 色の無い街と夢の記憶⑧

興味の対象が他の方に行き始めると、それと比べて学校は今まで以上に面白くない場所になった。けれど、それに気がついた事は良かったのかなとも思う。面白くないと思いながら学校しか知らないよりも、他の世界があることを知った。自分の世界が一気に広がった...
小説 色のない街と夢の記憶

小説 色の無い街と夢の記憶⑦

何とか少しずつ起き上がれるようになり、お風呂に入ったり、食べられるようになると元気が出てきた。学校にも行けそうかなと思って、とりあえず向かってみた。無理だったら戻ればいい。そう思ったらかえって気が楽で、行くことができた。元々目立つ存在ではな...
小説 色のない街と夢の記憶

小説 色の無い街と夢の記憶①

「新しくできたこのシステムによって、個人個人のデータを分析、犯罪を犯しそうな人を見つけます。そして、実際に何か起きる前に、いち早く逮捕してくれるのです。このおかげで私たちの安全は守られています。皆も知っている通り、個人のデータは信用スコアと...